永遠のあくる日

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永遠のあくる日

私には今でも忘れることができない大切な人がいます。
彼(彼女)は私と同じトランスジェンダーでした。
体は女性で心は男性の未治療のFTMでした。
今年で彼(彼女)が逝ってしまってから、ちょうど10年経ちます。

彼(彼女)は10年前に自ら命を絶ちました。
私と彼(彼女)は相思相愛でした。
私は彼(彼女)のことが本当に大好きで、心から愛していました。
結婚願望のない私が人生で唯一結婚したいとさえ思えた相手でした。

彼(彼女)は私より4歳年下でした。
20歳の誕生日を迎える前日の夜に旅立ちました。
「誕生日の日は仕事があるから」と、前日に一緒にお祝いをしました。
帰り際に彼(彼女)から手紙を渡されて、「必ず明日の夜に読んでね」と言われました。
私は言われた通りにすぐに手紙を開かずに、次の日の夜に手紙を開けて読みました。

手紙を読んでいる途中ですぐに彼(彼女)に電話をしましたが、応答はありませんでした。
その後も何度も彼(彼女)の携帯に電話をしましたが、彼(彼女)が電話に出ることはありませんでした。
後日、彼(彼女)の家族から電話があり、亡くなったと伝えられました。
彼(彼女)が亡くなったのは、手紙を渡された後のことでした。
私が手紙を読んでいる時には、すでに彼(彼女)はこの世にいませんでした。

私があの夜帰らずに朝まで一緒にいたら、今も一緒に生きていたんじゃないか。
何故、彼(彼女)の変化に気づいてあげられなかったのだろうか。
何度も何度も、悔やみ、悔しさはどうしようもない怒りに変わることもありました。
悲しみが大きすぎると涙が出ないことにも初めて気づいた時でした。

10年経った今でも、思い出しては悲しみに暮れることがあります。
「もう少し生きていれば、今はあの時よりもずっと生きやすくなっているよ。」
あの時に戻れるなら彼(彼女)に伝えたいです。
でも、もう戻ることはできません。彼(彼女)が生き返ることもありません。

彼(彼女)は生前自分の声が高いことに悩んでいました。
私と同じような理由と経済的な面で治療ができないFTMでした。
見た目は身長が173㎝あり、佐藤健似で男性にしか見えない見た目でした。
ですが、声だけは誰が聞いても女の子だと思うような高い声でした。
ずっと悩んでいたのは知っていましたが、私自身は声が高かろうが低かろうが
彼(彼女)のことは女男ではなく1人の人間として見ていたので、全く気にしていませんでした。
でも本人は命を絶ちたいと思うほど悩んでいた。
そして本当に命を絶ってしまいました。

今でも夢を見ているようで、何なら今も私は長い長い夢の中にいるのではないかと。
目が覚めたら彼(彼女)がニッコリ笑って「おはよう」と言ってくれるのではないかと。
願っても願っても夢は覚めません。
これが現実なのだと、何度も叩きつけられ、それでも尚夢が覚めないかと願ってしまいます。

私がこうして発信を続けているのは、自分自身の経験から誰かを勇気づけたい思いがあります。
それとは別に、もうこの世にいない彼(彼女)への想いとしても続けています。
そして、自分自身が自ら命を絶たないための予防線でもあります。

彼(彼女)の分まで幸せに生きる。
彼(彼女)からもらった手紙の中で約束したことです。
「僕のことは忘れてしまっても良い。だけど僕はずっとそばであなたを守っています。」
「僕の姿は見えなくても、あなたの命が危険なときは全力で助けます。あなたが道に迷ったら地図になります。
あなたが泣いているときは涙が止まるまでずっとそばにいます。あなたを傷付ける人には罰を与えます。
あなたが困っているときには助け舟を用意します。」
「素敵な人と出会って、僕の分まで幸せに生きてほしい。約束してください。」
「あなたが大切に思う人を、僕も大切に思います。」
「あなたのことが大好きでした。僕は一生忘れません。ありがとう。愛してる。」
「僕が幸せにしてあげられなくてごめんね。」
今でも手紙を読み返す度に涙が溢れてきます。

発信を続けることで、彼(彼女)と同じような境遇の方が少しでも生きやすくなるかもしれない。
そして私が自分の「好き」を発信することで、自分自身の人生が楽しくなる。
「楽しい」って、幸せな事だと思うんです。
「楽しい」を続けて、幸せな自分になって、誰かを幸せにしたい。
そんな思いで発信を続けています。

発信って電波を使うので、何だか逝ってしまった彼(彼女)にも届くような…
そんな気持ちにもなります。
「私は元気に幸せに生きているよ」と、天国の彼(彼女)にも見てほしい。

それでも、今もまだ夢を見ているんじゃないかと思ってしまいます。
永遠にあけない夢。
永遠のあくる日。

BGM▶︎ Ado 永遠のあくる日

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